代表挨拶
神津 カンナ kanna kouzu
『フォーラム・エネルギーを考える』代表/作家

『フォーラム・エネルギーを考える』(ETT)は平成2年(1990年)に発足し23年の歴史を積み重ねてまいりました。
 

これまでの私たちの活動は、「暮らしの中のエネルギー」という基本的なコンセプトのもとで、地球温暖化対策、原子燃料サイクル、電力自由化など、エネルギーを取り巻くその時々の大事な問題を取り上げ、生活者の視点・立場から共に語り、学び合ってきました。

今、私たちの周りでは東日本大震災と原子力発電所の事故を契機に、原子力や再生可能エネルギーのあり方など、国のエネルギーの将来を左右する重要な問題が議論され続けています。

しかし災害や事故の影響があまりにも大きいとはいえ、暮らしや経済・産業を支える極めて大切なエネルギー問題が、とかく感情的な対立議論に陥ったり、実現性の裏づけに乏しい数値だけの議論に終始したりと、不安定な乱気流の中に置かれてきているようにも思えます。

こういう時にこそ、空気や感情論に左右されたり、方向感覚を失って漂流しないように、冷静でバランスの取れた視点に立った考え方と行動が大切ではないでしょうか。

そのためにも、私たちは、Energy Think Together、まさに、「共にエネルギーを考える」という原点をしっかり見つめ、エネルギーの根本的、基本的なところをきちんと学んでいくことが欠かせないと考えています。

そのような問題意識のもとで、ETTは基本となる活動方針として、「より広く、より深く、より密に」という3本の柱を掲げ、メンバーの皆さまや各地域に根ざした活動に積極的に取り組んでおられる方々と共に歩んでまいりました。

「より広く」は、エネルギーの問題について、電気、石油、ガスなどを中心としつつ、さらに宇宙における発電や深海の地層や未開発資源の最先端研究、医療など、さまざまな分野を幅広く学び、より大局的にエネルギー問題を見つめ、視野を広げていきたいということ。

「より深く」は、たとえば石油やガスのサプライチェーンや発電送電の系統メカニズム、コストと各種料金の関連性、そして国のエネルギー政策の歴史や世界のエネルギー戦略といった、これまでも表面的には学んできた事柄についても、さらにまた一歩掘り下げて学んでいきたいと思います。

また、福島の再生に私たちがどんなサポートをできるのか、どのようにしたら福島の皆さまと寄り添えるのか、という最重要課題についても、積極的に論議していきたいと思っています。

「より密に」は、それぞれの地域で行われている勉強会の成果を各地のメンバーで共有したり、中央からのタイムリーな情報発信と地域の現状や課題に見合った勉強会を実施するなど、メンバーの方々と手を携えながら共に学び支え合っていくことです。

そして、このような活動や学びを通じて一人ひとりがしっかりと価値観を備え、生活者の視点、目線を失うことなく、きちんと自らの言葉で地域の方々へ伝えていただけるお力になれればと願っております。

私の好きな言葉に、ホンダの創業者、本田宗一郎氏の「右手と左手」の話があります。

「ハンマーをふるう右手はいつも目立ちます。逆に左手は陰になっていて、いつも犠牲になっています。だから必要ないかと言えば、とんでもない。左手があるからこそやれる。人間の仕組みも人間の組み合わせもそうじゃないですか」

今、日本ではハンマーを振り上げる〈右手〉がおびただしいように思います。けれども、支える〈左手〉がいなければ、釘は上手には打てないはず。こういう時こそ、エネルギーの問題に真摯に向き合っている多くの皆さまと共に私も、右手に押し流されないように、しっかりと釘を支える左手のような働きをしていきたいと切に願っております。

目立たない左手の役目をきちんと担う。基本を見失わない=Back to the Basicの思いを胸に、これからも地道な活動を目指す所存です。どうかよろしくお願いいたします。

(2013年5月)

神津 カンナ(こうづ かんな)プロフィール

作曲家の神津善行、女優の中村メイコの長女として東京に生まれる。東洋英和女学院高等部卒業後渡米。帰国後、執筆活動の他、テレビ、ラジオの出演、講演、また、公的機関や民間団体の審議委員なども数多く務めて精力的に活動。豊かな感性と冷静な視点に支えられ、幅広い層から支持されている。

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