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    中国電力 島根原子力発電所見学レポート【メンバー視察編】
“再稼働を控え安全対策に尽力する中国電力島根原子力発電所

    中国電力島根原子力発電所(松江市)は全国で唯一、県庁所在地に立地する原子力発電所で、1号機は廃止措置中、2号機(停止中)はできるだけ早期の再稼働を目指して新規制基準に対応する安全対策工事を進めており、東日本大震災が起きた2011年に試運転予定だった3号機(建設中)は新規制基準に対応する安全対策工事などを進めています。2022年10月5日、ETTメンバーは現地を訪れて現状を知るとともに、まだ燃料を装荷していない3号機の原子炉格納容器内に入って見学する貴重な機会も得ました。

    全国唯一、県庁所在地にある原子力発電所

    島根原子力発電所はJR松江駅から車で約30分、島根半島の北に位置します。メンバーは、まず海抜150mにある島根原子力館にて、資料を見ながら発電所について説明を受けました。中国電力の発電設備は合計約1,078.5万kwで、大規模な発電所として山陰側に島根原子力発電所と三隅発電所(石炭火力)、山陽側に火力発電所(7カ所)や太陽光発電所(2カ所)などがあります(2022年3月末現在)。島根原子力発電所がある松江市の人口は約20万人で、島根県庁と松江市役所は発電所から約9kmの市街地に位置します。UPZ(自治体が災害対策を重点的に行うエリア)の30km圏内には約46万人が住み、東海第二発電所(茨城県)、浜岡原子力発電所(静岡県)に次いで3番目に多い人口となっています。UPZの自治体は島根県の松江市全域・出雲市・安来市・雲南市、県をまたいで鳥取県の米子市・境港市の2県6市にわたるため、各地域への説明活動も行っているそうです。


    ■島根原子力発電所の立地位置

(図)


    発電所構内は島根半島の山(標高約200m)を背に、日本海に向けて敷地を造成し、東から1・2号機、少し離れた所に3号機を配置しています。約192万㎡(東京ドーム約40個分)の敷地の中で、協力会社含め約3,310名(2022年7月末時点)の方々が日々仕事をされています。1号機(46万kW、沸騰水型[BWR])は1974年に国産第1号として営業運転を開始し、2015年に営業運転終了、2017年から廃止措置段階に入ったところで、大規模な解体はこれからになるそうです。再稼働を目指す2号機(82万kW、沸騰水型[BWR])は、島根県と鳥取県の家庭で使う電気の約6割をまかなえる規模で、1989年に営業運転を開始し、東日本大震災後の2012年1月に停止してから10年半が経過しました。これまで計184回の審査会合を実施し、2021年9月に「原子炉設置変更許可」を受けました。その後も地域住民への理解活動を深め、2022年6月に島根県知事より事前了解、30km圏のすべての周辺自治体から再稼働が容認されましたが、工事計画認可申請の審査中であり、今後、保安規定変更認可申請の審査も行われます。「10年以上ブランクがあるので、できるところから点検もしながら、できるだけ早期に再稼働できるよう確実に準備をしていきたい」とのお話でした。

    3号機(137.3万kW、改良型沸騰水型[ABWR])は沸騰水型の新しいタイプで、出力は2号機の約1.5倍、島根県と鳥取県の電気をすべてまかなえるほどです。2011年6月に試運転をする予定だったので、プラントの中に新しい燃料を保管していますが、東日本大震災後から現在も新規制基準に対応する安全対策の工事を行っています。2号機を優先させて審査を申請していたため、3号機は2018年に国への適合性審査に申請し、現在はようやく2回目の審査が始まったところです。そのため再稼働までには、まだまだ年単位の時間がかかると想定されます。

    2・3号機の再稼働の必要性

    次に、2号機の再稼働・3号機の稼働の必要性について、3つにポイントを絞って説明がありました。
    ①「2030年度のエネルギーミックス」への適合〜日本は2030年度に向けた方針として、化石燃料の割合を約4割に減らし、非化石燃料の割合を約6割に増やし、そのうち原子力発電の割合は約20〜22%程度を目指す方針です。2・3号機が稼働すると中国電力の電力量の約2割をまかなえると試算され、国の目指す方向に近づけることができると想定されます。
    ②「2号機の稼働による燃料費の削減効果」〜中国電力では現在、火力発電で全体の約8割強をまかなっており、また燃料価格が高騰しているため、足下の燃料費は増大しています。2号機を稼働させると火力発電の割合を減らせるため、設備利用率約8割で燃料費削減効果は2022年度通年では年間950億円程度となり、2021年度の同550億円からは2倍近くになっています。島根原子力発電所のさまざまな安全対策費用は6,800億円程度と見積もりされていますが、経済的にも十分に活用していく意義があると言えます。
    ③「島根原子力発電所の稼働によるCO2排出抑制効果」〜2・3号機の稼働により、2020年度の中国電力CO2排出量(2,415万t)と比べて約3割の削減(▲640万t)に寄与できると試算され、国の2030年度の温室効果ガス排出削減目標(2013年度から46%削減)に貢献できることになります。

    島根原子力発電所の主な安全対策(止める・冷やす・閉じ込める)

    東京電力福島第一原子力発電所の事故を教訓に従来の規制基準の見直しが行われ、島根原子力発電所においても①浸水を防ぐ(防波壁、水密扉)、②電源を確保する(多様化)、③冷やす(冷却用ポンプなど水源の複数確保)、④事故の影響を抑えるといった4つの安全対策が行われています。具体的に、「地震」は発電所に近い断層の評価長さを約22kmから約39kmに見直して耐震設計の基準とする地震(「基準地震動」)を820ガルと評価し、重要な機器や配管の補強工事に加え、耐震性の高い受電設備や通信設備も新設しました。「津波」は最高水位評価の11.9mより高い、海抜15mの防波壁を発電所の海側全域に設置し、万が一防波壁を越えた場合に備え2・3号機の建物内外に100枚以上の強固な水密扉を設置して浸水を防ぎます。「竜巻」は最大風速92m/秒と評価し、給気口などに防護ネットなどを設置するほか、車両などはチェーンなどで地面に固定します。「火山の噴火」は三瓶山の火山灰層厚56cmと評価し、外気の取入口にフィルタを設置します。

    「電源を確保する設備」は従来の電源機能(外部電源、非常用発電機、蓄電池)が喪失した場合に備え、ガスタービン発電機や高圧発電機車などの発電設備の配備、蓄電池の追加、直流給電車の配備を実施し、さまざまなバックアップ電源を確保します。

    「冷やす設備」は原子炉などへ冷却水を注入するポンプが使えなくなった場合に備え、注水用配管を多重に敷設するほか、建屋外部から大量送水車で注水できるようにします。また、海水ポンプや冷却ポンプが使えなくなった場合でも、移動式代替熱交換設備を備え、原子炉の熱を海に逃がします。さらに非常用ろ過水タンクの追設、地下に注水用水槽の設置など、多様な水源によって冷却に必要な水を確保します。

    新規制基準に対応したさまざまな安全対策の取り組み

    メンバーは原子力館を出てバスに乗り、発電所へ下って行くとすぐに土砂の処分場が見えました。構内で安全対策工事を行う中で出た土砂が積み上げられ、ほかにもう1カ所設けられているそうです。左手に2・3号機の中央制御室を再現して訓練できる「運転シミュレータ棟」、右手には竜巻対策で構内に車を入れないため設置された立体駐車場(約800台)があり、構内で働く方はここからバスに乗り合わせて向かうそうです。これを含め構外に約2,000台分の駐車場を確保しているとのことです。ゲートを通ってトンネルを抜け、構内に入りました。海抜44m、正面に見えるコンクリート製の「貯水槽」は、元はプールのような形でしたが溢水対策で密閉化したため白い箱のように見えます。次に2号機が見えてきました。壁に設置された4本の配管の地下に「フィルタ付ベント設備」を設け、万が一の際に放射性物質の放射量を大幅に低減します。次に1号機が見えてきました。廃止措置段階ですが、まだ大きな建物は残っています。

    海抜50mまで上がると、赤い色の「送水車」、青い色の「移動式代替熱交換設備」を配備するエリアがあり、このような車両は構内4カ所に分散配置されています。左手には「緊急時対策所」の建物が見えます。当初は、その後ろにある「免震重要棟」が設置されましたが、壁厚を約1mにして放射線や地震の影響を低減する耐震構造の対策所が新たに建てられ、事故が発生した際に150名が1週間作業できるように水・食料・燃料を備えているそうです。次に見えてきた鉄塔は、有線・無線・衛星回線で国などへ情報を送るためのものです。さらに東日本大震災以降に設置されたヘリポートもありました。

    再びトンネルを抜けて進むと、外部の送電線が損傷しても受け口が壊れないよう、通常の10倍の鉄骨を使った緊急時の開閉所がありました。また、ディーゼル発電機が使えなくなった場合に高台に備えた「ガスタービン発電機」は6,000kVA×3台あり、1台で2号機に必要な安全対策の電源を確保できるとのことです。ジェットエンジンと同様の構造になっているため、ディーゼル発電機と違って水が不要です。車に乗せるタイプの「ガスタービン発電機」は4,000kVA×4台、「高圧発電機車」は14台用意されています。左手奥の軽油タンクで、1週間分の燃料を保管しているそうです。2号機の西側では、竜巻対策のため給気口を防護する鉄の蓋も確認できました。

    海抜33m、正面に3号機が見えるエリアに進み、高さ15mの防波壁を車窓から見学しました。岬の裾から3号機まで約1.5km連なっています。防波壁では、津波の際に沖合の漁船などの漂流物にも耐えるよう、さらに50cmのコンクリート製の壁を外側に付ける工事をしている様子が見えました。また、海底にある取水口の周りに堰をつくり、津波の引き波による水位低下が起こっても、冷却するための海水を確保し、冷却が続けられる対策も行っていると伺いました。

    3号機の原子炉格納容器の中へ

    海抜8.5mまで下ったところでメンバーは2班に分かれてバスを降り、ヘルメットと綿手袋を装着して3号機建屋に入りました。こちらは、通常は立ち入ることができない場所ですが、取材のため特別に見学させていただきました。まだ燃料を原子炉に装荷していないため、金属探知器や指紋認証などは運用されていません。コンクリートの壁や天井に銀色の配管が何本も通る通路は、新品のようにピカピカです。1.8tの重さの「水密扉」の横を通り抜け、上履きに履き替え、再び通路を歩いて「中央制御室」の前に着きました。3号機は「改良型中央制御盤」を採用しています。大型表示板で発電所の運転状況がひと目で見渡せて、机の操作用ディスプレイでタッチパネル操作できるデジタル式になっています。発生する事象のレベルに応じて赤、オレンジ、緑の警報ランプが点灯するなど工夫がされていました。一方、2号機はボタンやレバー式で操作方法が違うため、運転員の方はそれぞれの研修を受けて資格を取得するのだそうです。


    ■3号機(改良型沸騰水型[ABWR])の構造

(図)


    次にエレベーターで原子炉建屋最上階の見学ルームへ行きました。ガラス越しに原子炉の上部や燃料プールが一望できました。ここには、万が一水素が発生した場合でも酸素と結合させて水蒸気に変える「水素処理装置」が28台付いていました。タービン建屋では写真や図面のパネルと見比べて、かまぼこ型のタービンと発電機が1本の軸でつながっていることがよくわかりました。エレベーターで下り、いよいよ原子炉格納容器の中へ入ります。3号機は耐震性向上のため、建物と一体構造になった鉄筋コンクリート製の格納容器を採用しています。入口扉は放射性物質を外部に放出させないように厚みがありました。原子炉が破損することを防ぐために放射性物質の放出を大幅に低減してから外部に圧力を逃がす構造になっているそうです。

    原子炉格納容器内には無数の配管が設置されており、万が一トラブルが発生した場合は配管のバブルを締め、タービンに蒸気を送るのを止めることができます。次に、圧力容器の真下に行きました。ここにはABWRの特徴の一つである「原子炉内蔵型再循環ポンプ」が設置されています。また、炉心に制御棒を電動で出し入れすることでウランの核分裂反応を細かく効率的に制御できる「改良型制御駆動機構」についても説明を受けました。

    一連の見学を終え、全国から集まったメンバーからは「非常に多くの安全対策が施されていることを身に沁みて感じた」「今日伺ったことを情報発信していきたい」「原子力の技術を今後も継承していってほしい」「試運転間近だったのに10年以上も使われなかったことがもったいなく思った」など、さまざまな意見が出ました。コロナ禍が続いていたため久々のメンバー視察となりましたが、やはり一見は百分に如かずで、意義のある一日となりました。

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