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食のコミュニケーション円卓会議

《日 時》
2019年9月13日(金)18:30〜20:30
《会 場》
中央区環境情報センター研修室2
(東京都中央区京橋3-1-1東京スクエアガーデン6階)
《テーマ》
地球環境問題から見る世界の中の日本
地球環境問題についてパリ協定における合意の意味を日本ではどの程度まで正確に理解し、行動に移しているのでしょうか。日本の特異性を踏まえ、国際感覚で進めるべき対応について、安井 至氏((一財)持続性推進機構理事長)によるお話を伺いました。

講演
パリ協定への対応が遅れている日本

現在の日本では、政府やマスコミも地球環境問題をあまり取り上げていないように思えますが、先日、関東に大きな被害をもたらした台風15号は、日本近海の海水温が27〜30℃に上昇している地球温暖化の影響だったと言えます。2015年にCOP21で合意されたパリ協定対応のため、私も出席した政府懇談会の結果に基づき閣議決定し、「2050年までの戦略の概要」を国連に提出しました。パリ協定は、産業革命以後の人類史上の大変革、つまりCO2排出量の大幅削減と、今世紀中できるだけ早期の化石燃料文明からの離脱を求めています。そのために必要な科学技術は、再生可能エネルギーへの100%依存、CO2を地中や海中などに埋めて閉じ込めるCCS化や植物を使い大気中のCO2を減らすBECCS=バイオエネルギーCCS、DAC=直接空気回収による大気中CO2削減などが挙げられます。

パリ協定への対応が世界的にかなり遅れてきた日本では、TCFD=気候変動関連財務情報開示タスクフォースを経産省が全面支援したため、企業において一気に大転換が起きました。TCFDは、COP21の際に各国の財務大臣や中央銀行総裁が設立。「CO2による気候変動でビジネスリスクは格段に増大する。CO2の排出削減を積極的にしない企業には出資しない」というように、金融界から圧力をかけたわけです。TCFDに合意した企業は、世界では833社に対し日本では191社にも上っているものの、具体的対策は不透明のまま日本としては努力していることのみ世界に示しているとも言えます。

政府懇談会の報告書に盛り込まれた項目のうち重要なのは、長期戦略の視点です。「環境と成長の好循環の実現に向けて、気候変動問題を解決するには非連続なイノベーションの実現が不可欠である」としており、CCSや次世代蓄電池などなど具体的な課題が列挙される一方で、網の目状に細かく電力網がつながるヨーロッパに比べて、島国で魚の骨にも似た日本の電力網の未来像については、今回は指摘されていません。「イノベーション」という言葉が使われていますが、これまで日本では1958年の経済白書において「技術革新」と翻訳されて以来、この意味で定着してきました。しかしオーストリアの経済学者シュンペーターによる本来の意味は「新結合」でした。これまで出会ったことがない企業と企業、個人と個人が議論することにより、これまでなかった技術や制度が生まれることです。そして今、本来のイノベーションの定義に立ち返り、IoT、ロボット、人工知能(AI)、ビッグデータなど新たな技術を活用し、分野を横断してあらゆる産業や社会生活に取り入れ社会的な課題を解決していくSociety 5.0と呼ばれる新しい社会を目指しています。そこで何より重要なのはスピード感とコスト削減です。しかしこの未来型のイノベーションを推進するにあたって問題となるのは、日本の大学の応用科学系学科の研究から「社会実装」の意識が薄れていることであり、また、現行の特許システムでは、特許の有効期間は20年ですから、今特許を取得しても今世紀中ごろには期限が切れてしまいます。イノベーションは社会実装されて初めて価値を持つにもかかわらずです。 


「気候正義」とは何か

地球温暖化が続くとなぜ怖いのか。大気中のCO2の寿命は1万年も続くとされ、仮に2075年にCO2排出量をゼロにしても気温は下がらないと考えられています。今から手を打たないと陸氷の融解により海面上昇は止まらなくなり、例えばバングラデシュでは国土喪失による影響が1700万人に及びます。パリ協定では「気候正義」という言葉を使っています。先進国が化石燃料を大量消費してきたせいで起こった気候変動への責任を果たし、人々の暮らしと生態系を重視した取り組みを行い、化石燃料をこれまであまり使ってこなかった途上国が被害を被っている不公平さを正していこうという考え方です。2010年代以降、気候変動問題は国際的な人権問題として認識され世界各地で気候正義を求める社会運動も展開されています。 

日本では正義のとらえ方が曖昧で、気候正義という言葉が理解できない文化的な背景があります。キリスト教など一神教徒の多い欧米人にとって、「ゴール」とは到達することよりもゴールに向かう姿勢が重要であり、パリ協定は「地球レベルのゴール」です。しかし日本では目標を達成しないと評価されない、だから事業者によっては自らに不利なゴールを設定することに対し過度に配慮していますが、明確なゴールが示されれば事業の正しい将来ビジョンの構築にも有効です。そのため環境省はSDGs活用ガイドを掲げ、最近は大企業でSDGs導入が盛んになっています。SDGs(持続可能な開発目標)とは、2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に記載された2016〜30年までの国際目標です。

SDGsで最も重要なのは、貧困の解消のために“Transforming our world”(我々の世界を変革する)ということ。地球全体の破綻を迎えないためには、陸上・海洋生態系、水と衛生、気候変動対応が基盤にあるとしており、世界の共通認識です。企業としては、どのような戦略が必要になってくるのか。例えば、食料自給率が低い日本は、全世界から食料を調達していますが、異常気象増加による世界的な生産量の低下や人口増大による食料需要の増加、コスト上昇などのリスクがあり、環境変化の世界的な状況を把握し、将来的な調達への対応能力を高める必要があります。 


SDGsその概念を示すウェディングケーキモデル



地球規模の大変革に必要なのは、変わろうとするマインドとイノベーション

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、気候変動による被害は今後さらに拡大するとし、気温上昇を1.5℃までに抑えるべきとしていますが、その方法の一つとして挙げているのが、BECCS。植物にCO2を吸わせこれを燃やしエネルギー源にして、燃焼に際して出るCO2を溶液に吸収して集め、油田のような地形のところの地下に隔離貯留することです。しかしトキワススキのような成長の早い植物を栽培する広大な農地を開発するために、森林を伐採してしまうというデメリットもあり、陸上の生態系に大きなダメージをもたらします。最大の被害を受けるのは人口増大するアフリカにおける農地不足、食糧難でしょう。私個人としては、抑制目標を1.7〜1.8℃にしたらどうかと考えます。またBECCS と並んで、大気中から直接CO2を吸収する取り組み、DACも現実味を帯びてきました。これまで地球が備蓄してくれた化石燃料を使って発展してきた人類が、CO2を減らしながら未来のエネルギーをどうやってつくるのかについては、起こりうる弊害も含め哲学的な考察まで必要とされるのではないでしょうか。そして日本の特異性を認識しながら、世界でスタンダードな取り組みができる企業だけが今後は成長を維持でき、TCFDは温暖化がさらに進展した時に自社のビジネスにおけるリスクを想定したシナリオプランニングを勧めています。 

日本の立ち位置が世界の中で特異なのは、プラスチックごみに対しても同様です。一人当たりのプラごみ発生量はアメリカに次いで世界第2位の日本。レジ袋は来年4月から有料化されるようではありますが、利便性・効率性に優れるプラスチック容器はリサイクルされているのだからなぜ問題なのかということは、一般にあまり理解されていません。ただしこれまでプラごみリサイクルを他国に依存してきた日本は、最近中国のプラごみ輸入禁止問題に直面し、将来のリサイクル事業全体を見直す必要性が出てきました。といって無理やりプラスチック容器をゼロにすれば食品ロスが増えて、食料危機の可能性もあります。この問題については、世界的にLCA=ライフサイクルアセスメント(ある製品・サービスのライフサイクル全体、資源採取から原料生産、製品生産、流通・消費、廃棄・リサイクルにおける環境負荷を定量的に評価する手法)も推奨されるようになっています。


世界のプラスチック別のゴミの発生量推移


21世紀後半には、化石燃料からの離脱、エネルギー源は再エネ電力と水素を目指している世界にあって、日本経済を支えている製造業は果たして対応ができるのでしょうか。電力貯蔵について、日本ではこれまではできるだけ貯蔵効率の高い方法が優れているとしてきましたが、ドイツでは社会的ニーズに対応し転換すること自体がイノベーションと考えられ、電力需要が少ない時に岩石熱として蓄積し電力需要が多い時に発電機を動作させる、熱による余剰電力の貯蔵システムは、電力貯蔵効率25%でも、設備コスト、貯蔵コストは低くなっています。新しい人類文明を作り上げるための実現のキーワードは、イノベーションであり、我々は変わる、技術は変わる、です。どのように変えるのかは、地球規模の状況を把握し、今世紀後半の状況の予測にしかありません。だからこそ、私たち、そして未来を担う日本の若者にとり、自然科学やリスク対応への苦手意識を克服して明るい未来を描けるのかが、最大の課題と言えるでしょう。 



安井 至(やすい いたる)氏

(一財)持続性推進機構 理事長
1945年東京生まれ。東京大学大学院工学研究科博士課程修了、工学博士。東京大学名誉教授。東京大学生産技術研究所教授、同国際・産学共同研究センター教授、同センター長を経て、2003年に国連大学副学長に就任。09年より(独)製品評価技術基盤機構の理事長を務め、15年3月に退職。同年7月より現職。専門分野は、無機材料化学、環境科学、産学共同研究。資源エネルギー庁原子力小委員会委員長、持続性推進機構理事長。前製品評価技術基盤機構(NITE)理事長。

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