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8月25日
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2020年度メンバー会議 ①

《日 時》
2020年8月25日(火)13:30〜16:30
《会 場》
経団連会館5階(東京都千代田区大手町1-3-2)

コロナ禍により4月に中止となったメンバー会議を、時期を遅らせて開催。このような状況の中での限られたメンバー参加となりましたが、ETTの活動状況の報告や関美和氏の講演会、経団連の取り組みの紹介などを行うことができました。今回は昨年出版されベストセラーとなった『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』を翻訳された関美和氏(翻訳家)による本の内容についての紹介と、会場のメンバーからの質疑を交えた神津カンナETT代表との対談を掲載します。

講演 あなたの世界の見方は30年前で止まっている!? ~10 の思い込みを乗り越えてファクトに基づく世界の見方を知ろう~

10の本能によって世界がありのままに見えなくなっている

『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』はスウェーデンの医師ハンス・ロスリングさんが書いた本です。この本には、私たちが思い込みによって間違った世界の見方をしていることが書かれています。会場にいらっしゃる皆さんに本に書かれている質問をしてみます。例えば「世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は過去20年でどう変わったでしょう?」選択肢は「約2倍になった」「あまり変わっていない」「半分になった」 —— 正解は「半分になった」です。では「いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいるでしょう?」選択肢は「20%」「50%」「80%」 —— 正解は「80%」です。皆さんの答えはいかがでしたか? ロスリングさんによると、世界のエリートに質問した13問のクイズの正解率はチンパンジー以下で、しかも正解から最も遠い答えを選んでいる人が多かったそうです。

もともと感染症の専門医だったロスリングさんは、途上国で感染症の治療にあたる中、自分が今見ている世界と、世界の人々が見ている世界が違うと気づき、より悲観的、ドラマティックなものの見方をしているのではないかと感じました。その理由を考えて行き着いた答えが、人間には10の本能があり、その本能が世界をありのままに見るのを阻んでいるということでした。

10の本能を一つずつ見ていくと、①分断本能は、先進国と途上国、資本主義と共産主義というように、二項対立で世界を見る傾向があるけれども、決して分断されているわけではなく世界はグラデーションになっていると書かれています。②ネガティブ本能については、世界はどんどん悪くなっていると多くの人が思いがちだと言います。③直線本能は、例えば高齢者が増える、人口が増えると聞くと、あたかも永遠に増え続けると直線的に思ってしまう傾向が誰にでもあり、ところがある一定の時点でストップし減少することがわかっています。④の恐怖本能は誰でも持っていますが、問題はリスクの大きさと発生する頻度の掛け算であり、少ない度合いで小さなリスクが発生しても恐怖に駆られてしまうのは、昨今のコロナ禍で思い当たるかもしれません。⑤過大視本能については、目の前の数字を過大視してしまいがちで、コロナ感染で1,000人死亡と聞くととても大きな数値に思えますが、毎年お餅を喉に詰まらせて死ぬ高齢者はそれ以上いるのです。

また⑥パターン化本能の例としては、運転の苦手な女性が一人いただけで、全ての女性は運転が苦手だと思い込みステレオタイプに当てはめるのが人間の本能と言えます。⑦宿命本能とは、例えば日本人の文化や宗教観などによって全てが決められており、永遠に変わらないものだと思い込むことです。また⑧単純化本能については、一つの専門家が陥りやすい傾向ですが、自分の専門知識で他のことも解決できると思ってしまいます。⑨犯人探し本能は、社会がうまくいかない、悪いことがあった時、誰かを責めれば物事が解決すると思いがちですが、逆にうまくいっていたのは、社会の仕組みを支えている名もなき人のおかげだということに気づいてほしいです。そして⑩番目の焦り本能は、何か今すぐ手を打たないと大変なことになると焦ってしまい、その判断が思いもよらないネガティブな結果を生むと本の中に書かれています。


ありのままの自分に気づき受け入れるのが第一歩

『ファクトフルネス』が世界中で売れている一つの理由は、今の世界的な感染症の流行を予測していて、その対応に役立つことが挙げられます。でもなぜ日本で一番売れているのか。その答えは統計からわかるかもしれません。先進7カ国の13〜28才までの若者に対する調査では、自分自身に満足している若者の数、また自分が社会を変えられるかもしれない、もしくは将来も希望を持てる若者の数も日本は圧倒的に少なかったのです。悲観的なのは若者のみならず、「あなたは健康だと思いますか」という質問に対し、寿命や生活の質という客観的データでは日本は断然トップなのにもかかわらず、欧米諸国と比べて健康だと答えた割合が低いのです。

ロスリングさんが伝えたかったことの一つは、世界を悲観的に、ドラマティックに見る必要はない、ありのままに謙虚に事実を見ようということです。そして危険なものは危険と認識するけれど、目の前の数字にだけとらわれず、過去からの推移などを比較して正しく恐れようということ。ありのままの世界を見るためには、ありのままの自分を見つめましょう、つまり自分には必ず思い込みがあって、思い込んでいることにさえ気がついていないとしたら、そういう自分に気づき、受け入れることが第一歩なのではないかと思います。

また長い目で見れば、社会や世界は必ず良い方向に進歩していくのだから、戦争や貧困など悪いことと良くなっていくことは両立するだろうと書いてあります。もし何をやっても変わらないと思うと、人はなかなか良い方向に向かっていけませんが、世界は良くなっていると気づけば、そういう世界にするために貢献しよう、より良い未来を作ることに自分も参加しようとみんなが思うのではないかという願いをロスリングさんの言葉の中に強く感じました。ロスリングさんご本人は、がんの宣告を受けてからは全ての仕事を断ってこの本の執筆に全力投球をしましたが、残念ながら本が出版される前に亡くなり、彼の息子とその奥さんが編集して出版されました。この本を読まれる方には、ロスリングさんが命をかけて伝えようとした、ありのままの世界の見方や思い込みを捨てるという考え方が生き続けていくことを願っています。


対談

対談 犯人探し本能を刺激するメディアの報道

神津 日本人が悲観的ということについて、ETTメンバーから原子力発電に関して危険性ばかり強調されがちだが、悲観論ばかりではより安全なものを作ろうとするモチベーションが湧かないという意見が出ました。関さんは日本人が悲観的なのは理由があると思いますか。

 まず教育です。私はアメリカの大学院に行きましたが、学生をとにかく褒めます。褒めるが8に対してけなすは2。ところが日本は褒めるが1、けなすが9といった割合でしょうか。日本では子供の頃から普通から外れることに対して厳しい圧力がかかり、それが犯人探し本能にも強く繋がっていくように感じます。また日本だけに限りませんが、マスコミはネガティブなことに焦点を当てますよね。なぜかというと、人間はネガティブなことに対してより強く反応してしまう習性があるからです。だから犯人探し本能を刺激するような報道にどうしてもなってしまいます。

神津 先日、養老孟司さんと対談した時に、Twitterや Facebookが隆盛で、短い言葉や強い言葉の発言が優勢になりやすいからすぐに炎上してしまうけれど、刺激に反応するのは生物の一番原始的な行動だとおっしゃっていました。ドラマティックに物事をとらえるのがメジャーになって来た今の世の中に生きている私たちはどうすればいいと思いますか。

 一番いいのは、SNSを見ない使わない、ソーシャルデトックスです。ドラマティックに見る傾向は全ての人にあり、それを刺激する報道やSNSにおける言動の方が、世の中の関心は集まりやすいですし、情報伝達のスピードが早く増幅される現代では特に感じるのかもしれませんが、昔からそうでしたし、これからもきっとそうなるでしょう。ロスリングさんが訴えたかったのは、メディアのせい、テクノロジーのせいと言ってしまわず、どんな人の中にもそういう思い込みがあって、思い込んでいる自分に気づくのが第一歩だということです。

神津 なるほど。関さんご自身がなさっていることで、私たちにもできる方法は何かありますか。

 私は自分が何かに対して意見が違っている時こそ、自分がどこかに思い込みがあるのだなと考えて、いつもできるとは限りませんけれど、私と反対の立場の人がどうしてその考えに至ったのか考えています。 


自分側が正しいという思い込みを捨てて相手の意見を聞き世界を見渡す

神津 思い込みって何から生まれるのでしょうか。飢餓といえば、子供の頃に見たビアフラという今は存在しない国の痩せ細ってお腹の出た子供の写真がずっと刷り込まれています。

 ネガティブ本能かもしれません。少しずつ良くなっている世界を見た方がいいと思います。そして先進国と途上国という二つの境はなくなっていて、自分たちが先進国の人であちらが途上国と思っている日本人が多いことへの危機感もあります。

神津 メディアからのセンセーショナルな情報で分断本能が刺激されているというメンバーからの意見も出ましたが、思い込みから脱却するにはどうしたらいいのでしょうか。

 本能だから脱却は絶対にできないので、思い込みとともに生きるという意識を持つことでしょうか。

神津 思い込んでいるもの同士が対峙すると、どうしても相手をやりこめたり、こちらに引き込みたくなりますよね。今のコロナ禍を非常に怖がっている人がいる一方、経済は回していかなければならず、両立させるにはどういう方法があるのかと考えています。コロナ問題だけではなく、相反する意見が出てきた時、どのように対処するのがいいと思われますか。

 反対意見を戦わせるのは当然のことで、反対意見が出ることそのものに賛成という考え方があるんですね。そうでなければ付加価値が生まれませんから、反対意見を尊重するのは正しいと思います。とにかく自分たちが正しいと思い込まないことではないかと思います。

神津 ただ、昔から持っていた本能を変えるのは無理ではないか、この本を読んで気づいてしまった人の方がむしろ辛い思いをするのではないかというメンバーからの意見がありました。

 本能は誰にでもあって脱却できないので、ロスリングさんはまずは思い込みがあることを受け入れ、それに気づいただけで世界の見方が少し良い方に変わるかもしれない、と伝えようとしています。

神津 また、日本人が悲観的というのは、毎日同じ営みを続けて食糧を得て来た農耕民族の私たちと、獲物が得られないなら冒険しなければいけない狩猟民族の欧米人との遺伝子的違いからくるのではないか、というメンバーからの意見も出ました。

 宿命本能、つまり文化や歴史のせいで社会が変わらないというのも思い込みであり、今の社会ではむしろ経済や社会階層の違いの方が影響が大きいのではないかと思います。

神津 昔は自分の住んでいる村から一歩も出ず、見える範囲の思い込みだけで生きていれば幸せだったけれども、今は思い込みと事実が異なることを情報として得られるようになりました。だからこそ思い込みに対する認識を改めることができればいいなと、本日のお話で感じることができました。 



関 美和(せき みわ)氏プロフィール

翻訳家
慶應義塾大学文学部・法学部卒業。電通、スミス・バーニー勤務の後、ハーバード・ビジネススクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務める。現在は、杏林大学外国部学部准教授、アジア女子大学(バングラデシュ)支援財団理事。主な翻訳書に、『FACTFULNESS』『TEDTALKS』『Airbnb Story』(日経 BP)、『父が娘に語る美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』(ダイヤモンド社)、『MAKERS』『ゼロ・ トゥ・ワン』(NHK 出版)などがある。 また、アジア女子大学(バングラデシュ)支援財団の理事も務めている。

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