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食のコミュニケーション円卓会議

《日 時》
2020年12月3日(木)18:40〜20:20
《会 場》
Zoomを利用したオンライン配信
《テーマ》
バイデン次期政権の気候変動対策 -野心的な公約は実現するのか-

「食のコミュニケーション円卓会議」では、食の安心・安全の問題について学習会などの活動を頻繁に行っています。今回のZoomオンライン学習会では幅広い視野を養うべく、「バイデン次期政権の気候変動対策 -野心的な公約は実現するのか-」をテーマにした上野貴弘氏(電力中央研究所 上席研究員)のお話を伺いました。


講演
バイデン次期政権の気候変動対策-野心的な公約は実現するのか-
(小見出し1)
アメリカの気候変動対策は政権ごとに変遷してきた

私は大学入学当時理科系でしたが、国際関係論という分野に転じて環境に興味を持ちました。「地球温暖化という世界規模の問題に国際社会はどう対応できるのか」という難題を、電力中央研究所で研究し続けて16年目になります。途中でワシントンD.C.で学ぶ機会もあり、帰国後はアメリカから見た地球温暖化などについて問われることも多く、情報発信をしています。2020年11月3日に行われた大統領選挙の結果、民主党のジョー・バイデン候補が当選しました。バイデン氏は選挙戦のなかでかなり野心的な気候変動対策を公約していますが、いろいろな制約があるなかで本当に実現できるのかを見ていきたいと思います。

アメリカでは4年ごとに大統領選挙が行われ、最長2期8年まで務められます。これまでも政権が民主党か共和党かにより、気候変動対策は大きく変わってきました。民主党のクリントン政権(1993年1月20日〜2001年1月20日)では1997年に地球温暖化防止京都会議(COP3)が開催され、ゴア副大統領が京都議定書を取りまとめましたが政権は議定書に入る手続きをしませんでした。共和党のブッシュ政権(2001年1月20日〜2009年1月20日)が発足すると、京都議定書からの離脱を宣言。民主党のオバマ政権(2009年1月20日〜2017年1月20日)になると2015年にパリ協定の採択(COP21)においてリーダーシップを発揮し、国内の排出規制も策定しました。共和党のトランプ政権(2017年1月20日〜2021年1月20日)はパリ協定から脱退し、オバマ政権が定めた排出規制も撤回して内容を緩めた規制に置き換えました。そういった流れのなかで今度は民主党のバイデン政権となります。

アメリカで温暖化最大の原因となるCO2排出量を見ると、2018年のエネルギー関連(石油・天然ガス・石炭)のCO2排出量は2005年比で12%減っています。内訳では2014、5年からアメリカで石炭火力が急激に減少し、石炭のCO2排出量が激減しています。他方、シェールガス革命*で天然ガスが安く採れるようになったため天然ガス火力の発電量が増加し、2018年は前年比で天然ガスのCO2排出量が2.7%増えました。同じ量の電気をつくるのに天然ガス火力のCO2排出量は石炭火力の半分位で済むため、全体のCO2排出量は減ることになります。CO2排出量を経済の分野別に見ると<電力>は2000年代半ばから急激に落ちています。増えているのは<運輸>で、自動車の燃費は良くなっているものの、大型化が人気でガソリンを多く使うからです。<産業>と<建物>は横ばいか微増です。2020年は新型コロナウイルスのため経済活動が大幅に停滞し、全部足し合わせたCO2排出量も前年比10%位落ち込むと見込まれています。経済活動が戻れば一旦は増えるものの、5年先10年先もCO2排出量は緩やかに減り続けるだろうと予測されています。

*アメリカで2000年後半、地下深くシェール層に閉じ込められた天然ガス(シェールガス)を掘削する技術革新が起こったことにより、世界のエネルギー情勢が大きく変わること。


●エネルギー関連CO2排出量の実績と見通し
●エネルギー関連CO2排出量の実績と見通し(部門別)


アメリカでは地球温暖化を信じないという人もいます。「地球温暖化に対する心配度」を問う全米世論調査の経年変化を見ると、2017年から「非常に心配」の割合が急激に上がっていますが、トランプ政権への反動ではないかと思います。支持政党の内訳では、民主党の支持者は「かなり心配」から「非常に心配」に変わった人が多くなりましたが、共和党の支持者は「少し心配」「全く心配ない」が大半で変化していません。アメリカのなかで温暖化が心配な人が増えているのは確かですが、あるいは民主党と共和党の分断、二極化の溝が深まっていると見ることもできます。



バイデン氏の野心的な気候変動公約の柱は3つ

アメリカの大統領選挙は1年以上かけて行われます。前年の夏頃から政党のなかで候補者を決める予備選に向けた選挙運動が始まり、各政党の勝者同士で本選を戦います。今回、共和党の候補者は実質的にトランプ大統領一人だったのですが、予備選を本格的に行った民主党では当初は多数の候補者がいましたが、バイデン氏とサンダース氏が残り、最終的にはバイデン氏が勝ちました。両者とも2019年夏に気候変動対策の公約をそれぞれ出していました。民主党のなかでバイデン氏は穏健派、サンダース氏は急進左派と呼ばれ、4年前に予備選を争ったクリントン氏とサンダース氏との構造に似ています。けんか別れしたまま本選でクリントン氏がトランプ氏に負けた反省をふまえ、できる限り公約を一本化しようと2020年7月に両者が共同でタスクフォースを設置し、提言を取りまとめました。穏健的だったバイデン氏の公約にサンダース氏の急進左派の提言が反映された内容で、バイデン氏の「インフラ・クリーンエネルギー計画」が発表されました。同提言は、8月の民主党大会で採択された政策綱領にも盛り込まれました。

民主党としての気候変動対策の選挙公約の柱は3つです。①「2050年までにアメリカ全体でネットゼロ排出(脱炭素化)」を実現する長期目標を掲げる。②アメリカ国内の脱炭素化社会実現のために、経済の「部門別の規制的措置」と、「インフラ・クリーンエネルギー投資」をする。③就任当日にパリ協定に復帰するなど「気候外交」についてもさまざまな取り組みを行う。

「①部門別の規制的措置」に関する公約では、<電力>部門の実現が一番難しそうです。CO2ゼロ排出であれば再生可能エネルギーにこだわらない技術中立的なクリーンエネルギー基準を決め、それを何年に何割にするのか電力基準値を策定し、最終的に2035年までに全発電の炭素フリー(CO2排出量ゼロ)を目指します。元々サンダース氏は「2030年までに100%再生可能エネルギー」、バイデン氏は「2050年までに100%クリーンエネルギー」と公約していた真ん中を取り、「2035年までに全電力をクリーンエネルギーへ」という政治的妥協で決まったもので実現性はあまり考慮されていません。<自動車>は、全ての乗用車の新車が電化されることを確保するための新たな燃費基準を策定します。同様に日本でも、2030年半ばまでにガソリン車を禁止して全ての新車を「電動車」にする取り組みを検討するというニュースが出たところです。<建物>は2030年までに全ての新設商用ビルをゼロ排出化する新基準を立法し、2035年までに全ての建物のカーボンフットプリント(例えば建物に使われるコンクリートをつくる時に出るCO2なども含む)も半減します。<石油・天然ガス>については、アメリカは資源国なのでシェールオイル・シェールガス生産に伴うメタンの排出が大きいのですが、その排出基準を強化するほか、連邦政府が持っている開発地の民間への新たなリースを禁止してシェール革命の成長を止めます。

「①部門別の規制措置」がムチだとすると、アメ側が「②インフラ・クリーンエネルギー投資」に関する公約です。分野別にCO2ゼロ排出を導入するために政府が多額の予算を付け、政権1期目の4年間で2兆ドル(約210兆円)を投資すると公約しました。<自動車>に関する分野では、50万カ所のEV(電気自動車)充電ステーションへの投資や、燃費の悪い自動車からアメリカ製のゼロ排出車への買い替えを支援し、新たに100万人の雇用を創出します。また、人口10万人以上の全都市にゼロ排出の<公共交通>を提供します。<電力>の分野ではアメリカの労働者がアメリカ製素材で建設する蓄電・送電インフラへの投資、太陽光発電・風力発電の大量導入、労働者安全と環境正義*を確保する形で原子力発電・水力発電を活用します。ここで注目なのが、民主党の公約のなかに一定の条件付きではあるものの、原子力の活用が明確にうたわれたことです。<建物・住宅>は400万件の建物改修と200万戸の住宅耐候化(断熱効果を高めて空調のエネルギーコストを下げる)に投資をして100万人の雇用を創出します。さらにリチウムイオン電池のコストを10分の1にするなどの<技術開発>のほか、<農業・自然保護>への投資も挙げられています。

*工場や大規模なインフラ等をつくる時に弱者に負担や汚染のしわ寄せがいかないようにするという意味。

「③気候外交」に関する公約はまず、トランプ大統領が脱退した<パリ協定>に2021年1月20日の就任当日に復帰します。また、具体的な数字は未提示ですがより野心的な2030年目標をパリ協定の下で掲げるとしています。さらに、就任100日以内に主要排出国による首脳会合を招集し、<他国の削減目標強化>を働きかけます。日本では「2013年比で2030年までに26%削減」を掲げていますが、さらに減らせと圧力がかけられるでしょう。そのほか、中国を念頭にした<海外石炭融資の停止>への働きかけや、<中国等に対する気候変動対策への説明責任>の追及、輸入品に炭素コストを課金する<国境炭素調整>にも言及しています。さらに、石炭掘削など経済的に不利な状況になる人が取り残されないよう<公正な移行>なども検討されています。




「新規立法」のハードルは高く、「既存法」では公約に届かない

野心的で踏み込んだ内容の公約を実現するには「新規立法」が必要です。「既存法」でできるものは限定的だからです。アメリカにおける立法手続きでは議会がメインプレーヤーになり、上院と下院の本会議で法案をそれぞれ可決後、大統領が拒否権を行使せず署名すれば法律は成立します。つまり上院と下院と大統領が全部OKを出さないと法律はつくられません。重要なのは議会の多数派をどちらの党が握るかです。2020年までは上院(共和党多数)、下院(民主党多数)、トランプ大統領(共和党)でしたが、大統領選挙と同日に行われた議会選挙の結果、2000年12月3日現在は上院が僅差のため未定(2021年1月5日のジョージア州での決選投票で決まる予定)、下院(民主党多数)、次期バイデン大統領(民主党)となっています。

共和党が上院の多数派となる場合、上院本会議の議事進行は共和党のマコネル院内総務が握ることになりますが、同氏は「共和党の過半数以上が賛成する法案のみ本会議に取り上げる」方針のため、仮に下院(民主党多数)でバイデン氏(民主党)の公約に沿った法案が可決したとしても、上院共和党の過半数以上が支持する見込みはほぼ無く、本会議に取り上げられない可能性が大です。そうなると新規立法の範囲は超党派で合意できる範囲に限定され、規制強化と投資の両面ともバイデン氏の公約には遠くおよびません。


●連邦議会と大統領の勢力図(2000年12月3日現在)


一方、民主党が上院の多数派を奪取して上下両院の議事進行を握っても、「上院では重要法案の本会議可決に定数100分の60票の賛成が必要」という連邦議会上院の特殊なルールがハードルになります。民主党はジョージア州の決選投票で勝利しても50票にしかならず、残り10票を切り崩そうとすると法案内容を緩めることになるため、最初にすり合わせたサンダース側の急進左派の議員が反対に回る可能性が出てきます。つまり民主党が上院の多数を取ったとしても、公約通りの内容を法律にできないということになります。60票というハードルを下げるには2つの選択肢があります。⑴トランプ減税でも使った手段ですが、一定の要件を満たす財政関連の法案は<財政調整>の手続きにより過半数の51票で可決できるので、「インフラ・クリーンエネルギー投資」はこの方法で実現する可能性があります(※民主党議員50人と、50対50の場合に投票できるハリス副大統領の合計で51票)。他方、「部門別の規制的措置」は財政調整の対象外です。⑵規制強化の立法を通すために、60票ルールを定めた上院の議事規則を変更して51票にしようとの意見もあります。しかし、そもそも60票ルールには政権が変わるたびに法律もコロコロ変わらないようにする機能があり、これに手を付けるのは民主党のなかでも穏健派議員が反対しているので難しいかと思います。

残されているのは、議会を通して新しい法律をつくるのではなく、すでに世の中に存在している法律を使って公約に掲げた「規制強化」を導入していこうというシナリオです。オバマ政権1期目では共和党の上院議員を切り崩せずに排出量取引の新規立法が失敗に終わり、既存法のもとで自動車の燃費・温室効果ガス排出規制を定めるにとどまりました。2期目では大統領・行政府の既存法の下での権限に基づいて部門別の排出規制を幅広く策定しました。次のトランプ政権ではオバマ政権が定めた排出規制を1つずつ解体し、内容が緩いものに置き換えました。今回バイデン政権は新規立法の可能性を追求しつつも、現実的には既存法の下で規制の再強化に踏み込み、進めやすい分野の規制強化(自動車の燃費や、天然ガス田のメタン排出規制など)については、就任当日に規制検討着手の大統領令に署名するだろうと見込まれます。問題は、オバマ政権でも既存法で細かく積み上げていく規制措置だけでは大規模削減ができなかったので、「2050年までにゼロ排出」の長期目標の実現はこの方法だけでは難しいということです。裏技として大気浄化法115条という条文を用いれば野心的な大規模削減は可能となりますが、この条文を温室効果ガス排出に適用できるかは連邦最高裁の判断によるものと思われます。多くの場合、大統領が1期分の任期(4年)の間に任命する最高裁判事は1名ですが、トランプ大統領は3名任命したため、現在9人の判事のうち6人が保守派となり、大胆な排出規制を否定する可能性が高くなっています。




(小見出し4)
「気候外交」は最初に活発化するが、目標設定に難題も

外交分野は条約の批准を除いて、議会の承認がいらず大統領権限・行政権限で進めやすいことから、パリ協定への復帰や気候サミットの開催など、大統領気候特使に任命されるジョン・ケリー元国務長官の下で、大統領就任以降一気に活発化するでしょう。ただ、初動は早いのですが、2021年夏に大きな壁が出てきます。先程ご紹介したように、バイデン氏の公約と民主党の政策綱領は「2050年にネットゼロ排出」と言っているものの、パリ協定の下で掲げる「2030年目標」の数字には言及していません。推測するに、「2050年にゼロ」はビジョンとして提示しやすいものの、2030年は10年後なので政策の裏付けが無い数字を出すわけにいきません。新規立法や既存法の下で何ができるかは、議会の選挙結果や最高裁判事の判決次第であり、予想するには不確定要素が多過ぎるので数字が出せなかったというのが真相ではないかと思います。しかし、2021年11月に行われるCOP26までには、数字を間に合わせないといけなくなってきます。私がバイデン政権のスタッフだったら、国内での支持基盤や国際社会からの期待を踏まえ「2030年に2005年比で40%減程度」を目指すと思います。オバマ政権が「2050年に8割以上」の目標を掲げて国連に提出した長期戦略のグラフ上で、2030年時点は2005年比で40%減程度になっています。

しかしCOP26までに2030年削減目標の数字を出すとしても、その時点で裏付けとなる国内政策は正式決定されていない可能性が大です。既存法のもとで規制を成立させるには1年以上時間がかかるからです。そのため見切り発車的に2030年削減目標の数字を出さないといけませんが、裏付けとなった政策が後の段階で実施されないリスクもあります。オバマ政権では目標設定の裏付けとなった法案や規制案が廃案や撤回に追い込まれました。「目標の野心度」と「実現の信憑性」の両立は相当困難で、外交分野はロケットスタートするものの、夏以降はかなり苦悩するのではないかと私は予想しています。



上野 貴弘(うえの たかひろ)氏プロフィール

電力中央研究所 上席研究員
2004年、東京大学総合文化研究科 国際社会科学専攻(国際関係論)修士課程修了後、電力中央研究所 入所。2006年~2007年、未来資源研究所の客員研究員としてアメリカ・ワシントンD.C.へ渡る。2010年~2017年、東京大学 公共政策大学院 客員研究員。研究分野は地球温暖化対策、アメリカの環境政策、国際関係論。電力中央研究所 研究報告書「COP21パリ協定の概要と分析・評価」、学術論文「温暖化対策はどうあるべきか」、電気新聞「グローバルアイ」・日経ESGへの連載・寄稿、編著書、著作「トランプ新政権と温暖化対策」「オバマ政権第二期の気候変動対策と今後の行方」など多数。


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