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2020年度
1月15日
岐阜大学・十六銀行産学連携プロジェクト くるるセミナー
12月18日
大阪府立大学
12月10日
2020年度メンバー勉強会②
12月10日
2020年度メンバー勉強会①
12月3日
食のコミュニケーション円卓会議
12月1日
松江エネルギー研究会
11月30日
山口県地域消費者団体連絡協議会
11月21日
のべおか男女共同参画会議21
11月7日
中部エナジー探検隊
11月4日
にいはまエネルギー・環境クラブ
10月29日
フレンズQクラブ
9月18日
NPO法人WARP-LEE NET
9月5日
えひめエネルギーの会
9月4日
NPO法人
あすかエネルギーフォーラム
8月25日
2020年度 メンバー会議 ②
8月25日
2020年度 メンバー会議 ①
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2020年度メンバー勉強会②

《日 時》
2020年12月10日(木)13:00〜17:00
《会 場》
経団連会館(東京都千代田区大手町1-3-2)

企画委員が企画した勉強会の後半では、日本におけるエネルギー情勢と政策の行く末を秋元圭吾氏((公財)地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー・主席研究員)にお話しいただきました。


講演 
2050 年に向けた日本のエネルギー展望

カーボンニュートラルを目標とするエネルギー基本計画

今世紀後半に温室効果ガス排出削減が合意された2015年のパリ協定を受けて、日本は現行のエネルギー基本計画において2050年までに80%の排出削減を目指すことになり、2019年には最終到達点として「脱炭素社会」を掲げ、今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指しています。この年の夏、日本において気候変動による災害の多発化により、早期実現への圧力が高まり、今年10月、菅首相は「2050年にカーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と所信表明演説を行い、政治的にはエネルギー改革の動きが加速していくと考えられます。

CO2排出量が増えると気温が上昇する関係は統計を見ても明らかで、排出量をゼロにしない限り気温は上昇し続けるため、長期的にゼロ排出に近づけていくための総合的なリスクマネジメントが重要になってきます。「総合的」という意味は、今あるエネルギーシステムの大幅な変換です。最終的に、電気、水素(+バイオエネルギーおよび太陽熱等の直接熱利用)に絞られますが、別の方法として、CO2フリーの水素と回収CO2による合成燃料(合成メタンや合成液体燃料)での利用、CCU(Carbon capture and utilization:CO2の回収・利用 )も可能です。これらは水素の形を変えた利用形態の一つで、水素よりも貯蔵しやすく、都市ガスやガソリン等の既存の供給インフラや機器を活用できる利点があります。電気にしろ水素にしろ、製造過程においての脱炭素化が必要であり、一次エネルギーとしては再エネと原子力、化石燃料ならばCCS(Carbon dioxide Capture and Storage:CO2の回収・貯留)という3つで構成する必要があります。なおかつ、まったく炭化水素を使わないことは現実的ではないので、ある程度のCO2排出は許容し、以下の3つの方法を活用するオプションがあります。その1つが大気中のCO2を吸収する植物を増やす「植林」。ただし成長している間しかCO2を吸収し固定してくれないことと、相当な土地面積がなければCO2吸収効果が見込めません。2つ目がBECCS=バイオエネルギーCCSで、CCSとバイオマスエネルギーを結び付けた技術です。しかしアメリカ一国に相当する面積の土地が必要とされ、生物多様性への影響が懸念されます。3つめのDAC(Direct Air Capture:大気中から直接CO2を取り除く技術) とは、直接、大気を回収・地下に貯留するシステムですが、これは稼働に大きなエネルギーが必要とされます。

先進国においては長期的な予測が立たないことから大規模投資が行えず、また日本では東日本大震災以降、エネルギーシステム改革(市場導入により効率性を高めるための)により、短期的な効率性追求は有利ではあるものの、長期的な投資は過小になりがちです。一方、アメリカなどでは、小型原子炉(SMR(Small Modular Reactor) )開発が関心を集め、エネルギーの将来が不透明な中、短期的判断では合理性があると考えています。またデジタル化技術の加速により、需要側で分散型エネルギーリソースを制御することも可能になってきています。ただし、原子力発電のようなこれまでの大規模エネルギー供給技術は引き続き重要であり、安定供給の役割を認識しておく必要があります。



カーボンニュートラルに向けた長期エネルギーシナリオとは

今後、日本においてカーボンニュートラルに向けた長期エネルギーシナリオの分析がなされ、必要なイノベーションをどのように誘発し注力していくかについては「グリーンイノベーション戦略推進会議」で、エネルギー全体については「総合資源エネルギー調査会」で、また温室効果ガス全体は「中央環境審議会・産業構造審議会」において議論が進められていきます。エネルギーはシステムとして考えることが最重要ですが、再エネの太陽光発電のコストが下がっている世界標準と比較すると日本は高止まりしたままで、今後どの程度下がるのか予測しづらい状況です。自然任せの再エネの場合、需要に合わせた対策が必要で、例えば電力系統強化には膨大なコストがかかりますし、余った電力を貯めておく蓄電池導入によりさらにコストが上がる、というように、全体のシステムにとってどこが最適点なのか慎重に検討する必要があります。 

またカーボンニュートラルに必要な技術、DACは、濃度が薄い大気中からCO2を回収するため、化石燃料燃焼時排ガス等からの回収と比べ5倍近いエネルギーが必要です。ところがこのDACを活用した場合に限って1.5℃抑制シナリオにおいてCO2削減実行が可能であり、そのため開発は必須であることから、すでにベンチャー企業が取り組み始めコスト低下を図っています。


2050年の排出削減費用



もう一つカーボンニュートラルに必要な技術として注目されているのが水素です。しかし水素は二次エネルギーなので、電気から水電解して作るか、再エネの太陽光発電からつくらなければなりません。太陽光発電が安価になれば大量導入し電気では使いきれない分を水素に換え、安価にならなければ石炭・褐炭から分解してガス化、水素とCO2に分け、CO2は貯留するというブルー水素があります。一方、グリーン水素と呼ばれているものは、再エネから作られ、その利用先は鉄鋼製造、運輸部門、あるいは石油に代わる合成石油です。また下部グラフの右に書かれた合成メタンとは、水素とCO2からガスを作り、都市ガスのインフラをそのまま使えるので、これらを組み合わせることでカーボンニュートラルを達成させようというもくろみです。


2050年の排出削減費用



欧州ではいち早く2050年カーボンニュートラルを掲げていましたが、将来の技術想定が読めない中、手法のメインを平地の植林に据えています。日本の場合は平地が少ないので極めて小さいポテンシャルであり、デジタル化進展でより可能性が高い省エネを筆頭に、原子力、国内の再エネ、CCSに手法が絞られてきますが、CCSなし化石燃料、さらにBECCS、DAC、植林、鉱物化(コンクリートCCU)といった排出削減技術も掲げています。そして、技術的にできたとしてもコストとのバランスを図るために、それぞれの割り当てをどうするかが、今後の政府の議論の大きなポイントになってきます。


日本の正味ゼロ排出のイメージ:一次エネルギー





見直さざるを得ない2030年のエネルギーミックス

ここまで2050年の展望を見てきましたが、2030年のエネルギーミックスを見直す論点として、電気料金の上昇が挙げられます。FIT賦課金増加と燃料費による影響を受けており、電力自由化で一見して低下傾向に見えますが、実は下がり続けている所得で割り戻すと低下しているとはいえません。2018年電源別発電電力量と2030年目標を比較すると、天然ガス38%→27%、石炭32%→26%、石油7%→3%、原子力6%→22~20%、再エネ17%→22~24%となっており、原子力がこのまま再稼働されないと、コストが高い再エネの導入増加で、コストバランスのために安い石炭が残り続けることになります。CO2削減を考えて、政府としては非効率な石炭火力の停止を進める制度設計を試みていますが、補償金や地元雇用との関連性もあり、徐々に減らすための丁寧な議論が必要です。

原子力再稼働の進展は今のところ決して芳しくありません。エネルギーの3Eを考えた時、私は、原子力なしではカーボンニュートラルは実現できない、活用は必須だと考えています。また国民の中には再エネは環境に優しいという思い込みがあると思いますが、いかなる発電設備でも環境に影響を及ぼすことがあり、太陽光発電設備に関しては近年増加する災害に起因した被害の発生に対する安全面の不安や、景観や環境への影響等をめぐる地元との調整、廃棄対策など課題は多くあります。




電力市場化と次期エネルギー基本計画の課題

最後に電力市場の制度設計の状況と課題についてですが、これまでは総括原価方式で電力会社が調達し供給してきた電力は、市場を使って小売の全面自由化も行われています。電力市場は4つあり、実際に発電された電気は電力量としてKWh価値を「卸電力市場」で取引し、一方、電気はためられないのでピーク時の供給のための能力を取引する「容量市場」があります。また短時間で需給調整できる能力を取引する「需給調整市場」もできようとしています。「非化石価値取引市場」は、非化石電源で発電された電気に付随する環境価値、つまりCO2の価値を取引する市場です。エネルギーの市場取引は矛盾も多く、政府が意図したようなエネルギーミックスを実現できるかは現時点ではかなり不確実なため、長期的な投資がしづらくなっています。自由化により非効率な施設を整理したい電力会社が、利益が出ない中でも容量を確保し停電が起きないよう電力供給しなければ、日本の産業は伸びず社会は不安定化します。そして発電所等の建設にはおよそ10年かかり、原子力に至っては30年以上かかるので、設備投資は早目にスタートさせなければなりません。

世界はCO2正味ゼロ排出の方向に進んでいきますが、日本は、次期エネルギー基本計画でCO2排出ゼロの目標設定はいいとしても、①さまざまな革新的技術が相応のコスト内で実用化できるのか、②ある程度、国際的な協調が可能なのか、③DAC等の負の排出技術(NETs)の活用があり得るのか、そして完全な(CCS無しの)化石燃料利用ゼロは前提とするのか、④原子力発電の一定程度の利用は必ず前提とするのか、といった柔軟性を含んだプランにしなければ、コスト負担ばかり大きくなると思います。これまで化石燃料に依存してきた日本は、S+3Eの大原則を忘れず、対策コストの上昇抑制をしっかりと検証しながら、CO2の大幅な排出削減・正味ゼロ排出を実現させていくことが必要だと思います。 





質疑応答

講演後に行われた質疑応答では、「CCSは毎年話題にはなるが、実際に日本でできるのか」という質問に対し、秋元氏は「100年分のポテンシャルはあるといわれているが、地中の亀裂で漏れる可能性がないかなど慎重に探査した上で利用する必要がある」と答えられ、「国内の正味ゼロ対策に原子力こそ有効だと思うが、期待できないのか」という問いに対しては「原子力は安価で安定的な電源だと思うが、東日本大震災後の日本では信頼回復に時間がかかっている。まず安全確認、それから延長できるものはアメリカのように40年から60年まで稼働を延長し、さらに新増設の必要性も説いていかなければならないと思う」と答えられました。また「政府の主張と実社会ではギャップがあり、今は水素を売りたいガソリンスタンド業者はいないし、CCSは採掘の数十倍のコストがかかるので市場プレーヤーもいないが、産業として本当に成り立つのか」という問いには、「水素ステーションが赤字になっているように、今のままではビジネスは成り立たない。FIT導入時のように費用が我々の負担にならないよう、技術開発でコストが下がってくるタイミングで導入することが必要だ」と答えられました。



秋元 圭吾(あきもと けいご)氏プロフィール

(公財)地球環境産業技術研究機構システム研究グループリーダー・主席研究員
1999年、横浜国立大学大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。同年、財団法人地球環境産業技術研究機構入所。研究員、主任研究員を経て、2007年、同システム研究グループリーダー・副主席研究員、12年より主席研究員。06年には国際応用システム分析研究所(IIASA)客員研究員。また10〜14年、東京大学大学院総合文化研究科客員教授。15年、同非常勤講師。14〜20年、日本学術会議連携会員。IPCC第5次および6次評価報告書代表執筆者。そのほか総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会委員、産業構造審議会 産業技術環境分科会 地球環境小委員会委員、中央環境審議会 地球環境部会 気候変動影響評価等小委員会委員など、政府の各種委員会委員も務めている。エネルギー・環境を対象とするシステム工学が専門。


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