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大阪府立大学

《日 時》
2020年12月18日(木)14:35〜16:05
《会 場》
Zoomを利用したオンライン配信
《テーマ》
地球環境保全における生命圏の役割

大阪府立大学 生命環境科学域 緑地環境科学類にて授業を受け持っておられるETTメンバー槇村久子氏((一財)大阪市男女共同参画のまち創生協会理事長)の招聘により、「地球環境保全における生命圏の役割」をテーマにした安成哲三氏(総合地球環境学研究所所長/筑波大学・名古屋大学名誉教授)の特別講義がZoomを利用したオンライン配信で行われました。


講演 地球環境保全における生命圏の役割
(小見出し1)
「地球の生命圏は光合成を通して気候を形成してきた」

現在、CO2増加に伴う地球環境の変化が大きな課題となっています。パリ協定では「2050年までに世界中でCO2排出量をゼロに」すべく各国に努力が要請され、日本も脱炭素社会宣言を出しました。ここで大事なのは「温暖化は本当に脱炭素、CO2排出量をゼロにするだけの問題か?」です。それには「そもそもCO2はなぜ大気中に出てきたのか?」ということから考えないといけません。

地球の生命圏の特徴は「光合成」で、光合成を通して地球の気候が形成されてきました。光合成とは、「太陽エネルギーを利用した酸化・還元過程により炭水化物(生命にとってのエネルギー源)を生成するしくみ」です。30〜33億年前、紅色細菌の光合成は、CO2とH2S(硫化水素)で炭水化物をつくって水を放出するプロセスでした。27億年前以降、シアノバクテリアの光合成になると、CO2と海洋の水で炭水化物をつくって水と酸素を放出し、酸素が大気中にたまっていくプロセスになりました。5〜6億年前になると陸上植物が出現し、光合成が広がったことで酸素が急増して大気上層にオゾン層が形成され、紫外線を吸収して動物に安全をもたらし、進化を助けました。動植物はこの酸素を使って呼吸をして、またCO2と水に戻していくというサイクルができたのです。「地球の物理・化学的環境は生命圏を変化させたと同時に、生命圏自身が物理・化学的環境を変化させた」という相互作用の関係は非常に重要な視点です。

オゾン層の維持・形成には「酸素」が必要です。生命圏の森林が光合成をしてつくられる酸素が対流圏から成層圏に上がっていき、紫外線を受けて分解・合成されてまたオゾン層が形成されるという循環が行われています(図参照)。もう一つ強調したいのが「水」です。光合成には水が必要ですし、動植物も水がないと生きていけません。地上に近い対流圏では雲ができて雨を降らし、地上に落ちて水蒸気として上がり、また雲をつくる「水循環」が起こっています。これは、対流圏の上のオゾン層が紫外線を吸収して上ほど温度が高くなる安定な大気層の成層圏が形成され、対流圏にフタをした状態(cold trap)になることで水蒸気は成層圏まで上がらず、対流圏内で氷になって落ちていき地上に水を戻すという水循環を可能にしています。生命圏の光合成によってつくられたオゾン層、そのオゾン層によってつくられた成層圏があることにより、水は宇宙空間に逃げずに対流圏で循環するしくみがつくられているのです。


生命圏は自らのために地球環境を形成した


現在、人間活動が化石燃料の燃焼によってCO2を放出し(+50億トン/年)、森林の減少が大気中のCO2をさらに増やしています(+20億トン/年)。一方で植物体は光合成によって大気中のCO2を大きく減らし(−1,020億トン/年)、さらに死ぬと土壌に炭素を蓄積し大気中のCO2を減らします。海でもプランクトンなどがCO2を吸収しています(−920億トン/年)。陸上でも海洋中でも、生命圏が炭素循環において大きな役割を果たしています。

私の専門は気候学・気象学ですが、1980年代から東シベリアやボルネオなどで大気圏・水圏・生命圏の繋がりを研究する現地観測や衛星データ分析、コンピュータシミュレーションなどで続けてきました。雨が多く気温の高い熱帯には熱帯雨林というように、気候が植生、生命圏を決めている側面もありますが、これらの研究を通して「気候と生命圏は密接な相互作用をしている」と見たほうがいいとわかってきました。ユーラシア大陸東部は湿潤なモンスーン(季節風)気候帯で、熱帯からシベリアまで植生が続いています。北のシベリアからヨーロッパまでは年間降水量が250㎜程度と少なく、気候分布で言えば砂漠に近い地域なのに、永久凍土の上にシベリアカラマツの大森林「タイガ」が広がっています。掘って調べると地表面近くの浅い部分に根が集中し、下は凍った層です。夏場に数十cmだけ融ける水を使って光合成をして、冬場は冬眠状態で生き抜いています。今後千年間のシベリアの生態系をコンピュータモデルで再現すると、永久凍土が無いと仮定すると、シベリアカラマツはほとんど無くなってしまいます。一方、森林が光合成をするとCO2を吸収して水蒸気を出し、地地表面の温度の低下が抑えられるので、永久凍土も森林により維持されます。ただ、「地球温暖化」でシベリアが2℃以上温暖化するとタイガは消滅する可能性も予測されています。「シベリアにおける永久凍土とタイガは一体となった地・生態系」なのです。

シベリアの夏の雨はほとんど森林からの蒸発散によるものです。人工衛星のデータでは光合成量の多い地域ほど蒸発散量が多く、雨も多く降っています。森林があることで光合成→水蒸気→雲→雨→土壌に水を供給→光合成という「水循環」が起こっているからです。熱帯のボルネオ島でも同様の水循環と生態系の相互作用のあることがわかりました。近年、熱帯雨林が人間活動により減少しており、降水量も減少しています。植生と環境が密接な相互作用をしているという事実は、「環境によって生物は進化する」というダーウィンの進化論に修正を迫る一方、生態学者の今西錦司氏が約80年前に出した「生物と環境は一体である」という見方の正しさが実証されつつあります。




生命圏は地球をどのように変えてきたか?

過去数億年スケールでの「大気中のCO2レベルの変化」を見ると、全体的には減少してきた一方で、過去の大量絶滅では生物の活動が衰えることによってCO2が上昇しました。光合成がいかにCO2を減らしてきたかは、温暖化を考える時に重要です。3億年前にCO2レベルが急激に減ったのは大森林ができたからですが、その森林の大木が地中に有機炭素として埋没し、何億年もかけてできたのが石油石炭です。それを特に産業革命以降に掘り出して、CO2を急激に大気に排出しているのが人間なのです。

「大気中のCO2濃度の変化」を見ると人類誕生後(250万年程前)までは減り続け、ここ1万年位は280ppm位で推移してきましたが、産業革命以降は急激に増えて現在は400ppmを超えています。南極氷床の分析などからも過去100万年、経験したことの無い急激な増加が見られます。CO2と同様に温室効果を持つメタン、一酸化二窒素も同様に増え、今後の人間活動によってさらに増えていく予測です。「地球全体の平均気温変化」を見ても氷期の終了以降、完新世といわれる最近1万年位は大きな変動は無かったのですが、20世紀以降急激に上昇しつつあり、21世紀末には19世紀頃に比べて4〜6℃程高くなると予測されています。


0年から2005年までの温室効果ガスの濃度





アジアでの取り組みが持続可能な地球社会の未来を担う

私たちは「18~19世紀におけるインド・中国での植民地化に伴う森林伐採は気候の変化に影響しているのか」という研究も行いました。モンスーン・アジアでは(小麦などと比べて)高い収量性のある水田稲作が盛んだったため、産業革命以前から人口が多く、当時の世界のGDPの半分以上を占めていました。水田は「水循環」を利用した、持続可能な農業システムなのです。しかし、産業革命以降の西欧の「近代化」と帝国主義によりアジアでは植民地化が進み、インドでは1700年以降、森林が破壊されてプランテーション(綿花などの商品作物の栽培)が増えた結果、モンスーンの降水量が減ったことが気候モデルのシミュレーションからわかりました。また中国で行った研究では、水田や森林から上がる水蒸気が梅雨前線を強めていることもわかりました。

*日本・中国・インドなど、アジアモンスーン下の地域。

20世紀後半以降は人間活動が急激に増大した結果、気候変化、海洋酸性化、化学汚染、生物多様性の減少、地表面改変、水資源枯渇、成層圏オゾン減少などが引き起こされ、もはや完新世ではなく、人新世(人類世)となり、地球は限界に来ているのではないかと指摘されています。生命圏でも、過去1万年の間に年間絶滅率(約40種)も24倍に増え、生命圏の健康が失われつつあります。地球の自然システムは、いわば全人類のための「グローバル・コモンズ」であり、この共通の財産をベースに、人類社会のシステムが成り立っているという思考が大事です。すなわち、SDGs(持続可能な開発目標)は、それぞれの目標をバラバラに考えるのではなく、「自然システム」と「経済・社会システム」の相互関係として理解しない限り、持続可能性にはつながりません。特にアジアでは人口、エネルギー消費量、CO2排出量が急激に増加し、世界での占める割合も最も高くなっており、未来可能な地球への転換にはアジアでの取り組みこそが重要になります。問題は資源が無限にあると化石燃料を使い続け、気候だけでなく、気候の調整機能を持つ生命圏を壊してきたことです。「持続可能な生命圏と共存できる経済・社会体制の構築」がこれからの大きな課題と思います。




参考:大学共同利用機関シンポジウム2020
   「新型コロナウィルス(COVID-19)問題と気候変動問題
   ―「緑の回復」による同時解決へ―」
   安成 哲三 総合地球環境学研究所 所長

    ⇒ https://youtu.be/3s8j0UpEu38



安成 哲三(やすなり てつぞう)氏プロフィール

総合地球環境学研究所所長/筑波大学・名古屋大学名誉教授
1947年生まれ。1971年京都大学理学部卒。1992年筑波大学地球科学系教授。1977‐2005年海洋研究開発機構地球フロンティア研究システム・領域長(兼任)。2002年名古屋大学地球水循環研究センター教授。2003年東京大学教授(併任)。2013年より現職。受賞:日本気象学会山本賞(1981年)、日本気象学会賞(1986年)、日経地球環境技術賞(1991年)、日本気象学会藤原賞(2002年)、水文・水資源学会功績賞(2014年)、日本地球惑星科学連合フェロー(2015年)。著書:「ヒマラヤの気候と氷河」(東京堂出版)、「地球環境とアジア」(岩波書店)、「地球気候学―システムとしての気候の変動・変化・進化―」(東京大学出版会)など。


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