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2021年度冬季メンバー勉強会

《日 時》
2021年12月15日(水)13:00〜16:00
《会 場》
経団連会館2階 国際会議場(東京都千代田区大手町1-3-2)

ETT企画委員が企画した勉強会は、会場とWEBのハイブリッド方式で行いました。2050年カーボンニュートラル実現に向けた世界の情勢と現実的な課題や、日本が今後どのような道を選べば良いのかなど、COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)に参加した有馬 純氏(東京大学公共政策大学院特任教授)に詳細なお話を伺った後、メンバーによる意見交換と質疑応答を行いました。

講演
地球温暖化をめぐる内外情勢と脱炭素技術の役割

COP26までの世界の動き

2015年COP 21のパリ協定において、世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち1.5℃に抑える努力をすると定められましたが、1.5℃抑制の動きが強くなり、温室効果ガスを現時点から45%追加削減との議論が生じています。昨年は新型コロナ感染拡大で世界中がロックダウンしエネルギー消費量が減り、CO2排出量も19年比で約5.8%減少しましたが、今後10年でそれを上回る年率7.6%も減らし続けなければ45%に到達しません。2020年から各国が2050年カーボンニュートラル宣言を始め、アメリカではトランプからバイデンに大統領が変わり、気候変動を政策の中心に据えました。4月に行われた米国主催のWEB気候サミットは、トランプ時代とは打って変わって米国が温暖化問題にカムバックし、世界のリーダーシップを取ることを意図したもので、米国自身も2030年までに05年比で50〜52%削減目標を出しました。

日本は日米同盟もあり、2030年度目標を13年比26%削減から46%削減にまで引き上げました。EU全体では昨年12月の時点で90年比40%減を55%以上削減に引き上げています。他方、中国は昨年国連総会で、習主席が2060年のカーボンニュートラルを宣言した一方、2030年目標は見直しておらず、インド、ロシアは長期目標も出していませんでした。主要国の対応が大きく分かれたわけです。6月開催のG7サミットで議長国イギリスは、COP26開催国でもあるので、気温上昇1.5℃抑制、2050年カーボンニュートラルと2030年目標へのコミット、さらに排出削減対策が講じられていない石炭火力発電からの脱却を加速など野心的なメッセージを盛り込みました。しかし、G7サミットの直後に行われたG20環境気候エネルギー大臣会合では発電の6〜7割を担う石炭に対するネガティブな扱いに中国やインドが反発し、ロシアやサウジアラビアも石炭叩きが化石燃料叩きに波及することへの懸念から反対しました。10月にイタリアで行われたG20サミットにおいても1.5℃、2050年カーボンニュートラル、国内の脱石炭に対するG20全体としての意志は示されず、「海外の新しい排出削減対策が講じられていない石炭火力発電に対する国際的な公的資金の提供を2021年末までに終了」と表記されるにとどまりました。

世界各国で温暖化に対する姿勢が異なるのは、国によってプライオリティが違うからです。経済的に豊かな国スウェーデンなどでは気候変動対策の優先度が高いですが、中国では17のSDGsの中で健康・福祉や貧困撲滅が上位を占め、気候変動は15位と低いのです。温暖化対策に必要なコストは気候変動対策が拡大すれば確実に上がり、各国の政治や経済状態によっては優先的に進めることはできなくなります。また、アメリカでは大規模な自然災害が多発していることから気候変動に対する意識が高まっているものの、対策のための負担金額支払い意思については、半数以上が月額1ドル、年間12ドルにとどまっています。しかしIEAによる試算を元に、1.5℃抑制達成に必要な炭素コストは、アメリカ人一人当たり年間約1,200ドルにも上ります。パリ協定発祥の地フランスでも数年前に炭素税引き上げに伴うガソリン価格引き上げにより、トラックドライバーの抗議活動に端を発した「黄色いベスト運動」で全土が混乱に陥りました。つまり温暖化対策は大事でも、許容できるコストの議論抜きにはできません。貧しい途上国ではますますコスト負担への抵抗は強いでしょう。

温暖化対応をリードしてきたEUが導入しようとしている国境炭素調整措置が大きな議論を呼んでいます。EUは、目標引き上げに伴うエネルギーコスト上昇で産業分野が国際競争上不利にならないよう、炭素コストを課していない国からEUに入ってくる安価な製品に対して炭素関税を課そうとしています。欧州委員会によるガソリンエンジン自動車販売の2035年実質禁止の提案もインパクトが大きいです。「黄色いベスト運動」で苦渋を舐めたフランスではエネルギーコストの上昇につながる動きに慎重になっており、自動車産業が盛んなドイツでは電気自動車一辺倒に反対の声が上がっています。一方、シェール革命で世界最大の産油国になったアメリカですが、バイデン政権の民主党内でも巨額な温暖化予算に異を唱える議員がいます。バイデン政権のグリーン政策の結果、シェールオイル、ガス等への投資が停滞しており、ガソリン価格高騰を引き起こしています。これは「グリーンインフレーション」と呼ばれ、来年の中間選挙を控え、高まるインフレに悩む国民にこれ以上生活を苦しめるような気候変動対策を講ずることができるか疑問です。かたや中国は、先進国が温暖化対策を進めるほど中国製再エネ関連製品が売れて世界シェアを拡大し、先進国が化石燃料の消費を減らす一方で、中国は化石燃料に依存したまま経済成長し続けており、漁夫の利を得ています。


COP26は何を残したのか

世界ではエネルギーの様々な問題に直面していますが、COPは温暖化防止のみを扱う極めて特異な場で、エネルギーの価格上昇に逆行するような議論が行われています。10月末から2週間かけて英北部のグラスゴーで行われたCOP26には130カ国以上の首脳が集まり、コロナ禍にもかかわらず史上最大の約4万人の参加者になりました。議長国イギリスは目標の中でも、今世紀半ばまでにグローバル・ネット・ゼロを確保し、1.5度目標を射程にすることを最重視しました。首脳によるセッションの中で日本の岸田首相が行なったスピーチでは、特にアジアにおける先進国であることを意識した「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」提案で、アジアの実情を踏まえたエネルギー転換支援を行うとし、先進国全体で年間1,000億ドルの資金支援目標の不足分を率先して補うなど、かなり踏み込んだ支援策を掲げ、評価に値すると思います。

COP26の成果文書として採択された「グラスゴー気候協定」では、パリ協定の目標を再確認しつつ、1.5℃の温度上昇抑制のために2030年には全世界のCO2排出を10年比45%削減、今世紀半ばにはネットゼロを目指すとの方向性を打ち出しました。最後まで揉めたのが石炭火力で、インドでは安価なエネルギーでなければ貧しさから脱却できないため、国産の石炭を使い続けられるよう「フェーズアウト」ではなく「フェーズダウン」の表現に修正を求めました。

COP26の評価は国によっても分かれますが、明らかに火種を残しました。パリ協定が多くの国で合意できたのは、野心的な目標を掲げつつ、各国がそれぞれの事情に応じて目標に対する進捗状況を報告し、罰則は受けないという柔軟な枠組みだったからです。COP26では1.5℃目標を前面に押し出した結果、2050年までに排出できるCO2総量に枠をはめたような形になりました。今後は限られた炭素予算をめぐって先進国と途上国間に熾烈な戦いが生まれるでしょう。途上国側は先進国に対して目標達成の前倒しやエネルギー貧困にならないよう支援の拡大を迫るでしょうが、先進国側は現在コロナの影響やヨーロッパにおける燃料費高騰のエネルギー危機などで経済的に弱っている中で、どこまで対応できるか疑問です。化石燃料を排除するというCOPと、エネルギーの現実との乖離はますます拡大すると思われます。さらに来年のG7議長国のドイツの連立政権の一翼を担う緑の党が「勝負の10年」においてG7が率先垂範すべく、更なる目標の前倒しや上積みを提案する可能性もあります。今後の10年は、先進国は途上国からの目標引き上げ圧力、資金援助拡大要求に悩まされることになるでしょう。温暖化問題は、地政学と地経学に極めて密接にリンクしており、来年行われるアメリカ中間選挙や3年後の大統領選、米中関係の行く末などに注視していかなければならないと思います。  


コストを見据えた日本の取るべき温暖化対策 

脱炭素化に向かう世界情勢の中で、日本は、昨年10月の菅首相(当時)による「2050年カーボンニュートラル宣言」を実現するため、「グリーン成長戦略」を策定し、成長が期待される14分野の産業において政策を総動員して、予算、資金を投入していきます。カーボンニュートラルが実現できるかどうか楽観視できませんが、日本が得意とする技術の支援は有意義だと思います。電力の分野における脱炭素化が大前提になり、再エネを中心とし水素、アンモニア、火力発電+CCS、そして原子力の最大限活用も進めていく方針です。

問題はコストです。2050年シナリオでは電力需要が30〜50%増になり、20年の電力コストに比べ2倍程度に増加、全てを再エネにすると4倍以上に上昇する試算です。脱炭素化の政策目標を実現するためには、使えるオプションをできるだけ多く持ち続け、それを組み合わせながら進めるべきであり、特定の選択肢を排除すればコストは上昇します。しかし福島第一原子力発電所の事故以後、脱原発の機運が高まり、反原発原理主義や再エネ原理主義になってしまうと、結果的にコストは上がらざるを得なくなります。従来、エネルギーミックスの目標数値は、自給率を震災前に戻し、コストを最小限に抑え、諸外国に比べ環境も遜色ない目標に抑えるという連立方程式で設定されていたのに対し、今年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画の電源構成は、2050年カーボンニュートラル目標を直線的にバックキャストした46%目標先にありきの数字合わせとなり、バランス感覚が欠落した相当無理な数字になっています。


第6次エネルギー基本計画素案の電源構成
(グラフ)


電力料金の中に含まれている再エネ賦課金の国民負担総額は現在のエネルギーミックスでは約4兆円と想定されていますが、第6次エネルギー基本計画では6兆円に増加すると試算されています。化石燃料価格の今後の低下を前提として電力コストは低下すると見なしていますが、化石燃料への投資が減り、需給ギャップが生じているため、足元ですでに上昇している化石燃料価格は、今後も間違いなく上昇します。日本のエネルギーコストは世界で最も高く、産業用電力料金比較では中国の2倍、アメリカの3倍以上です。今後、再エネが安価になるかは、各国の条件によって異なり、日本の場合は国土面積も平地も狭く、海が深いなど悪条件のため、国際水準よりも再エネコストが高くなっています。天候に左右される再エネを今後大幅に拡大すれば、電力需給バランス確保のための蓄電池や送配電網のコストが増大していくのは必至です。


変動性再エネのシェア拡大に伴いシステムコストは増大
(グラフ)


では、日本にとって一番安い温暖化対策は何かと言えば、既存の原子力発電所の再稼働と運転期間の延長であり、さらには小型原子炉技術の開発等を通じた新設・リプレースだと思います。欧米では、脱炭素に向けて原子力を含めあらゆるオプションを使う計画です。日本は2030年46%削減でさえ厳しいのに、COP26の結果、今後更なる上乗せ圧力も想定されます。エネルギーコストが上がり続けると、企業は疲弊し、所得が減り、経済のみならず日本全体が疲弊していきます。また、再エネ事業の競争力が高い隣国中国への依存が増せば、国家安全保障上もリスクが高まります。資源に恵まれず隣国とのネットワークもない日本は、これまで政治的に避けて来た原子力を見直し、先人たちが培って来た技術を生かし国内資源を有効に使うべきだと思います。

 


講演後にグループディスカッションを行った結果、質疑応答をしました。「カーボンニュートラルなど難しいエネルギーの問題をみんなが共通認識できるようなわかりやすい伝え方はないか」という質問に対して、有馬氏は「エネルギーと温暖化問題には表裏があること、世界各国の経済的格差やエネルギー資源の差異、そして日本のエネルギー環境の脆弱性などトータルに理解できるような学校教育がまず必要だ」と答えられました。
「COP26の裏事情を知りたい」との問いには、「議長国イギリスは現在金融やサービス業がメインになっているが、温暖化対策のカーボンクレジットで金融製品も発生するし、企業のCO2排出量認証技術でも利益確保のチャンスが生まれるので、EU離脱後の国益を考えていると思う」とのお答えでした。
「温暖化対策の世界基準に従うだけでなく島国で資源がない日本の国情をもっと主張してもいいのではないか」という問いかけには、「パリ協定では国情に合わせた目標を作っていたが、COP26は一方向に無理に引っ張ろうとしている。各国独自の状況をリスペクトしながら遠回りでも少しずつ進んで地球全体が協力するのが大切だ。日本の場合は欧米型とは異なるアジア地域の国々とより密接な関係を結ぶべき」と答えられました。
「1年で状況が変わると思うが、来年のCOPはどのように予測しているか」とたずねると、「次回は紅海に面したエジプトの都市で行われ、アフリカ諸国の代表として、途上国支援、特に先進国による資金援助が大きなテーマになるだろう」との答えでした。
最後の質問は、「小型原子力はどのようなものか」で、「再エネの変動電力に対応しやすく、安全性も格段に高くなり、さらにコストも安くなるだろう。イノベーションへの期待とともに、技術の社会実装が確実に行われるようにしなければならない」と答えられました。


有馬 純(ありま じゅん)氏プロフィール

東京大学公共政策大学院特任教授
1982年東京大学経済学部卒、同年通商産業省(現経済産業省)入省。経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部参事官、国際エネルギー機関(IEA)国別審査課長、資源エネルギー庁国際課長、同参事官等を経て2008~11年、大臣官房審議官地球環境問題担当。11~15年、日本貿易振興機構(JETRO)ロンドン事務所長兼地球環境問題特別調査員。15年8月東京大学公共政策大学院教授、2021年4月より東京大学公共政策大学院特任教授。21世紀政策研究所研究主幹、経済産業研究所(ERIA)コンサルティングフェロー、アジア太平洋研究所上席研究員、東アジアASEAN経済研究センター(ERIA)シニアポリシーフェロー。IPCC第6次評価報告書執筆者。帝人社外監査役。これまでCOPに15回参加。著書「私的京都議定書始末記」(2014年10月国際環境経済研究所)、「地球温暖化交渉の真実―国益をかけた経済戦争―」(2015年9月中央公論新社)「精神論抜きの地球温暖化対策-パリ協定とその後-」(2016年10月エネルギーフォーラム社)、「トランプリスク-米国第一主義と地球温暖化-」(2017年10月エネルギーフォーラム社)。「亡国の環境原理主義」(2011年11月エネルギーフォーラム社)


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